はじめに

「審美歯科」という用語が定着し、患者さんの間でも普通に使用される時代になってきました。

元来歯科医療の目標は、口腔疾患の治療・予防・健康の保持にあり、生体が機能を回復し、健康を取り戻した上での「審美」であれば、患者さんも心身共に健康を取り戻したと実感するに違いありません。
社会生活の中で、この審美性の問題は、患者さんに対しても心理的に大変微妙に影響を及ぼしています。
人前で歯を隠すことなく自信を持って笑えるということは、その人の人生を明るくし、生活の質を向上させます。

ところが、この「審美」という言葉からイメージするように、「審美歯科」は医療であるにもかかわらず、
美容(cosmetic)的な要素を多く含んでおり、医療(機能)とは違う方向へシフトしていることも事実です。
あたかもピアノの鍵盤のようなただ白いだけの歯が理路整然と不自然に並んでいるような症例もよく見かけます。
たとえそれが患者さんのニーズであっても
「審美=白さ」はあまりにも短絡的な考えだと思います。
その「白さ」も天然歯に見られる、美しい透明感のある自然な白さを再現しなければならないと思います。

歯の色調だけではなく機能性を重視した形態、歯周組織に調和した形態こそが
予知性の高い審美修復治療に必要ではないかと考えています。
我々歯科医師の仕事は、疾病の治療と並行して審美性さらに芸術性についても常に考えなければならないものです。
いずれにしても歯科医師が審美を追求する歯科医療に携わる職人であるという側面をもっている以上、
心と体を癒す医者であると同時に、
美に対して理解し、追求できる芸術家でもなければならないと考えています。

日本の人々に口腔の美に対する認識を高め、さらに真に美しい顔、健康美を与え、より良き微笑みを
与えるために私は日々努力し、研鏁を積み、臨床に携わっていくことが使命であると考えております。

院長 六人部 慶彦