クラウン(俗にいう被せもの、差し歯)の種類について
審美的な治療を目的に用いられる保険適応のクラウンには下記の2種類があります。
- 硬質レジン前装クラウン
- 硬質レジンジャケットクラウン
硬質レジン前装クラウンは、前歯の領域(左右の犬歯間の6本をいいます)に適応され、硬質レジンジャケットクラウンは主に左右犬歯後方の歯2本(小臼歯)に適応される人工の歯です。レジンとは、素材が高強度の樹脂(プラスチック)です。
硬質レジン前装クラウンの構造は、裏面が金属で表面にレジンを前装した人工の歯で、硬質レジンジャケットクラウンの構造は、金属の裏打ちなしにすべてが硬質レジンで製作された人工の歯です。上記のレジンクラウンは、保険適応であることから比較的安価な治療法ですが、レジンの素材が樹脂(プラスチック) であることから下記がデメリットになります。
- 摩耗(すりへり)しやすい
- 経時的に光沢が失われる
- 経時的に変色する
- 強度的に破折の危険性がある
- 歯垢(プラーク)が付着しやすい(汚れやすい)
- 金属を含んだ修復物であるがゆえに、天然歯に近似した透過性が再現できない
- 金属による影が影響し、歯と歯肉(歯ぐき)境界部が黒ずむ可能性が高い
- 場合により金属アレルギーの原因となる可能性がある
などの欠点が考えられます。
このことから、長持ちして自然な美しさを維持させるためには、素材がセラミックスのセラミッククラウンによる治療法が勧められます。
この修復法は、すべての歯に適応可能ですが、保険適応外の治療となります。
セラミッククラウンには、現在のところ下記の3種類があります。
- ハイブリッドセラミッククラウン
- メタルセラミッククラウン
- オールセラミッククラウン
などが挙げられます。
ハイブリッドセラミッククラウンは、高強度のレジンにセラミックス成分を含有させた修復物ですが、修復後にレジンの欠点が出現する可能性は否定できません。
長期的に安定した修復を希望されるのであれば、純粋なセラミッククラウンを適応されることをお勧めします。
セラミックス素材は、レジンと比較して、
- 摩耗することはほとんどありません
- 経時的に光沢が失われることがありません
- 経時的に変色することはありません
- 歯垢(プラーク)の付着率は、天然歯の1/7~1/8というデーターがあり衛生的です
セラミックス材料(陶器・強化ガラス)とは、天然歯のエナメル質と同等の強度(堅さ)を兼ね備えており、変形しにくい材料であるものの、もろいという性質があります。例を挙げると、
高い位置から紙コップを落とした場合、コップは変形しても破折(割れる)ことはありません。
一方、陶器やガラスのコップを落とした場合、破折する(割れる)可能性はあります。
紙コップを陶器やガラスのコップを比較すると、
明らかに陶器やガラスのコップの方が堅く強度的には優れていますが、衝撃力に対してもろく破折する可能性があるという欠点があります。
歯科において、セラミックス材料を単体で使用する場合、上記の理由から口の中で破折する危険性も考えられます。したがって、セラミックス材料を修復物に応用する際には、もろい性質のセラミックスを補強する必要があります。
メタルセラミッククラウンは、もろいセラミックスを金属で補強する構造で、裏面が金属、表面にセラミックスを焼き付けた修復物です。
これは、強度的には信頼性はあるものの、金属を用いることにより、硬質レジン前装冠と同様に、
- 天然歯に近似した透過性が再現できません
- 金属による影が影響し、歯と歯肉(歯ぐき)の境界部が黒ずむ可能性があります
- 場合により、金属アレルギーの原因となる可能性があります
などの欠点を有しています。
したがって、上記3種類のセラミッククラウンの中で最も天然歯に近似した色調と光透過性を再現することのできる修復物として考えられるのは、オールセラミッククラウンです。
治療例は、オールセラミッククラウン、ジルコニアオールセラミッククラウンの項を参照して下さい。